エンジニアリングデザインにおける創造性
「やっかいな問題 (Wicked Problem)」と呼ばれる問題の解決を行うデザインプロセスを科学的に研究し、知見を現実のプロジェクトに反映することで次世代のイノベーション創出に貢献します。
イノベーションの創出には、エンジニアリングとデザインを組み合わせます。デザインでは、5つのステップ「ユーザーへの共感」「課題定義」「アイデア発想」「プロトタイプ創出」「ユーザーテスト」を何度も繰り返します。研究では、それぞれのステップをよりよく実施する検討や、プロジェクト全体を研究しています。
保育園でのデザイン実践を通した研究
メタバースを用いた保育室の環境改善
保育園といった現場に入ることが難しい場所に対して、保育室を三次元スキャンしメタバース空間に保育室を再現することで閉鎖的な現場を体験することを可能にします。このメタバース空間内でワークショップを開催し、保育士とデザイナーが共同で保育の現場をより良くする研究を行っています。
・Yuki Taoka, Momoko Nakatani, Takumi Sato, Kaho Kagohashi, Fuyumi Iwasawa, Shouichi Hasegawa, Shigeru Owada, Shigeki Saito. “Co-design in virtual environments with 3D scanned childcare rooms in social virtual reality”, DESIGN2024, May. 2024.
・田岡 祐樹, 中谷 桃子, 籠橋 香歩, 南部 隆一, 津久井 かほる, 大和田 茂, 長谷川 晶一, 佐藤 巧, 菊地 駿佑, 齊藤 滋規. “保育室を再現したデジタルツイン空間での共創デザインワークショップ手法の探索”,ヒューマンインタフェース学会, Jun. 2023. 【ヒューマンインタフェース学会2023研究会賞 受賞】
現場の動画をベースとするデータに基づく共創デザイン手法の提案
保育現場をより良くする際に、保育士とデザイナーや専門家による共創デザインが有効だと考えられています。そこで現状把握のため、保育を振り返るために用いる動画の活用が有効であると期待できますが、共創デザインで議論可能な動画の切り出し方や、議論を促進するデータの可視化手法は不明です。また可視化したデータがどう共創活動を支援するかも未解明です。そこで本研究は実践の様子を抽出した「保育状況データ」に基づく保育士とデザイナー等による共創デザイン手法を研究しています。
・大和田 茂, 中谷 桃子, 藤田 佐和子, 田岡 祐樹, 齊藤 滋規. “VisRef: 子ども向け教育現場の動画省察支援ツール”, ヒューマンインタフェース学会論文誌, Vol. 26, No. 1, pp. 87-100, Feb. 2024.
・Sawako Fujita, Yuki Taoka, Shigeru Owada, Momoko Nakatani, Shigeki Saito. “Towards co-design with daycare staffs based on in-situ behavioral data: A case study of a workshop for reflection based on video recordings”, 25TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON HUMAN-COMPUTER INTERACTION, July. 2023.
共創ワークショップ
多様な人で未来について考えるワークショップの実施
未来リビングラボ にて、研究者や企業関係者や生活者など多様な関係者が、未来の「食生活」「子育て」「働き方」といったテーマについて議論するワークショップを開催しました。この研究では、10〜20年後の「ちょっと先の未来の社会」をよりよくするためのアイデアやチームを生み出すことを目指しています。
・Tomomi Miyata, Yuki Taoka, Momoko Nakatani, Mika Yasuoka, Nana Hamaguchi, Shigeki Saito. “The effect of series workshops on ownership of societal issues: Case study on designing food for the future”, 25TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON HUMAN-COMPUTER INTERACTION, July. 2023.
・Nana Hamaguchi, Momoko Nakatani, Yuki Taoka, Mika Yasuoka, Tomomi Miyata, Shigeki Saito, Erika Ashikaga, Kakagu Komazaki, Ushio Shibusawa, Yoshiki Nishikawa. “How can we encourage ownership to social challenges?: Comparison of three types of workshop themes”, 25TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON HUMAN-COMPUTER INTERACTION, July. 2023.
ユーザー理解
IoTデバイスを用いたユーザー調査方法の開発
ユーザーへの共感は、ユーザーの生活を洞察し、ユーザーのニーズを理解するために重要です。 しかし、ユーザー調査の主な方法であるインタビューと観察だけでは不十分であることもわかってきています。 そこで、本研究では、ユーザーの生活環境における家電製品などの使用状況を認識するセンサーのデータを利用して、ユーザーの記憶を呼び起こす新しいユーザー調査手法を研究しています。
Tomoyuki Tanaka, Yuki Taoka, Shigeki Saito. “Enhancing the Quality of User Research Using Embedded IoT Sensors for Collecting Life Information”, DESIGN 2022, May. 2022.【Reviewers’ Favorite受賞】
創造性
洞察問題解決過程に与える影響
洞察問題解決(Insight Problem Solution)とは、解決の当初には行き詰まりの状態(Impasse)に陥るものの、その状態から脱却するために試行錯誤を重ねていくうちに、解が突然ひらめくというタイプの問題だと言われています。歩行動作などの特定身体運動が、Impasse脱却からの大きなトリガーになっているのではないかという仮説のもと研究を進めています。
・RIn Ito, Yuki Taoka, Yuki Okazaki, Shigeki Saito. “Exploring the Relationship between Insight and Pupillary Response in Insight Problem Solving”, 第38回日本認知科学会, 日本認知科学会大会発表論文集日本認知科学会大会発表論文集, Vol. 38, pp. 752-757, Sept. 2021.
・Yuki Taoka, Yuki Okazaki, Rin Ito, Shigeki Saito. “Evaluating the impact of incubation timing on constraint relaxation from fixation in insight problem solving”, 日本認知科学会第38回大会発表論文集, Vol. 38, Page 746-751, Sept. 2021.
グループ活動の支援
チームの活動内容が成果物の質に与える影響
エンジニアリングデザインコースの中核Project-Based-Learning(PBL)授業であるエンジニアリングデザインプロジェクトといった長期プロジェクトにおけるチーム活動のメカニズムはあまり明らかになっていない現状があります。そこで、「チーム活動の可視化」と「成果物の質とチーム活動の関連」の分析をし、チーム活動を解明する研究をしています。
Akira Ito, Yuki Taoka, Shigeki Saito. “Analysis Designers’ Process of Insight Generation through Empathy with Users”, DESIGN 2022, May. 2022.
メンバーの専門多様性がアイデア発想時の創造性に及ぼす影響
エンジニアリングデザインコースの中核Project-Based-Learning(PBL)授業であるエンジニアリングデザインプロジェクトにおいて,「メンバーの背景知識や専門性がどのようにチームとしての創造性に影響を与えるのか」に関しての研究を科学的アプローチに基づいて研究しています
Yuki Taoka, Haruhiko Mihono, Shigeki Saito. “USING LINKOGRAPHY TO VISUALISE THE INFLUENCE OF EDUCATIONAL BACKGROUNDS ON COLLABORATION AND CREATIVITY IN IDEA GENERATION”, DS 110: Proceedings of the 23rd International Conference on Engineering and Product Design Education (EPDE 2021), Sept. 2021.